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身体拘束に対する考え方
身体拘束に対する考え方
平成12年の介護保険制度の施行時から、介護保険施設などにおいて高齢者をベッドや車椅子に縛りつけるなど身体の自由を奪う身体拘束は、介護保険施設の運営基準において、「サービスの提供にあたっては、入所者の『生命又は身体を保護するため緊急やむ得ない場合を除き』身体拘束を行ってはならない」とされており、原則として禁止されている。身体拘束は、高齢者に不安や怒り、屈辱、あきらめといった大きな精神的な苦痛を与えるとともに、関節の拘縮や筋力の低下など高齢者の身体的な機能をも奪ってしまう危険性がある。また、拘束されている高齢者を見る家族にも混乱や苦悩、後悔を与えることになる。 高齢者が他者からの不適切な扱いにより権利を侵害される状態や生命、健康、生活が損なわれるような状態に置かれていることは許されるものではなく、身体拘束は原則としてすべて高齢者虐待に該当する行為と考えられる。
身体拘束の具体例
- 徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
- 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
- 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
- 車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。
- 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。
- 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
- 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
- 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。
緊急やむを得ない場合の対応
介護保険指定基準上、「当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合」には身体拘束が認められているが、これは、「切迫性」「非代替性」「一時性」の三つの要件を満たし、かつ、それらの要件の確認等の手続きが極めて慎重に実施されているケースに限られる。
- 「緊急やむを得ない場合」の対応とは、これまでにおいて述べたケアの工夫のみでは十分に対処できないような、「一時的に発生する突発事態」のみに限定される。当然のことながら、安易に「緊急やむを得ない」ものとして身体拘束を行うことのないよう、次の要件・手続に沿って慎重な判断を行うことが求められる。
【参考】 ★介護保険指定基準の身体拘束禁止規定 「サービスの提供にあたっては、当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他入所者(利用者)の行動を制限する行為を行ってはならない」
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(1) 三つの要件をすべて満たすことが必要
以下の三つの要件をすべて満たす状態であることを「身体拘束廃止委員会」等のチームで検討、確認し記録しておく。
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切迫性
利用者本人または他の利用者等の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと
- 「切迫性」の判断を行う場合には、身体拘束を行うことにより本人の日常生活等に与える悪影響を勘案し、それでもなお身体拘束を行うことが必要となる程度までに利用者本人等の生命または身体が危険にさらされる可能性が高いことを、確認する必要がある。
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非代替性
身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと
- 「非代替性」の判断を行う場合には、いかなるときでも、まずは身体拘束を行わずに介護するすべての方法の可能性を検討し、利用者本人等の生命または身体を保護するという観点から、他に代替手法が存在しないことを複数のスタッフで確認する必要がある。 また、拘束の方法自体も、本人の状態像等に応じて最も制限の少ない方法により行わなければならない。
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一時性
身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること
- 「一時性」の判断を行う場合には、本人の状態像等に応じて必要とされる最も短い拘束時間を想定する必要がある。
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切迫性
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(2) 手続きの面でも慎重な取り扱いが求められる 仮に三つの要件を満たす場合にも、以下の点に留意すべきである。
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「緊急やむを得ない場合」に該当するかどうかの判断は、担当のスタッフ個人(または数名)では行わず、施設全体としての判断が行われるように、あらかじめルールや手続きを定めておく。特に、施設内の「身体拘束廃止委員会」といったような組織において事前に手続き等を定め、具体的な事例についても関係者が幅広く参加したカンファレンスで判断する体制を原則とする。
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利用者本人や家族に対して、身体拘束の内容、目的、理由、拘束の時間、時間帯、期間等をできる限り詳細に説明し、十分な理解を得るよう努める。その際には、施設長や医師、その他現場の責任者から説明を行うなど、説明手続きや説明者について事前に明文化しておく。 仮に、事前に身体拘束について施設としての考え方を利用者や家族に説明し、理解を得ている場合であっても、実際に身体拘束を行う時点で、必ず個別に説明を行う。
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緊急やむを得ず身体拘束を行う場合についても、「緊急やむを得ない場合」に該当するかどうかを常に観察、再検討し、要件に該当しなくなった場合には直ちに解除すること。この場合には、実際に身体拘束を一時的に解除して状態を観察するなどの対応をとることが重要である。
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(3) 身体拘束に関する記録が義務づけられている
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緊急やむを得ず身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得なかった理由を記録しなければならない。 【参考】 ★介護保険指定基準に関する通知 「緊急やむを得ず身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得なかった理由を記録しなければならないものとする」
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具体的な記録は、後載の「身体拘束に関する説明書・経過観察記録」を用いるものとし、日々の心身の状態等の観察、拘束の必要性や方法に関わる再検討を行うごとに逐次その記録を加えるとともに、それについて情報を開示し、ケアスタッフ間、施設全体、家族等関係者の間で直近の情報を共有する。 この「身体拘束に関する説明書・経過観察記録」は、施設において保存し、行政担当部局の指導監査が行われる際に提示できるようにしておく必要がある。
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